エアシャワーは、クリーンルーム内への持込防止の大事な機器です。シーズシーは、安価な標準型から、シートシャッター式、除電装置付きや天井ダウンフロー、 業界初!粒子センサーで動作する最先端の 「EVEエアシャワー」まで、幅広くお客様に合せた提案が可能です。
業界初!センサー付きエアシャワー「EVEエアシャワー」
EVEエアシャワーは粗大粒子をカウントし、閾値以下になるタイミングで入室が可能となるエアシャワーです。従来はタイマー式であったエアシャワーの数値管理を実現し、エアシャワーはクリーンルームの入り口にある装置から「クリーンルームのホコリの持込み数を管理する装置」に生まれ変わりました。
エアシャワー入門編
クリーンルームと言えばエアシャワー。切っても切れない関係ですが、意外とエアシャワーの詳細については知らない方が多いように思います。「エアシャワーはこれからクリーンルームに入るときの通過門。言ってしまえば神社の鳥居のようなものだ」というご意見を聞いたこともあります。ではおまじないのようなものなのでしょうか?「いやいや、エアシャワーがないとクリーンルームはゴミだらけになる」というご意見もあります。
ほんとはどうなのでしょうか?
このページでは「エアシャワー入門編」と題して、仕様書・カタログの読み方、エアシャワーの効果と問題点、その他エアシャワーに関することを大特集しました。
基本仕様について
風速(ゴミを吹き飛ばす力に関連しています)
人用エアシャワーは各社により若干の違いがありますがだいたい20~30m/秒と台風並みの風速です。一般に表面に着いた異物を吹き飛ばすには、面あたりの風速の早さが速いほどよく落ちるとされています。ですから、エアシャワーの除去能力は風速が速い方がよいことになります。
ところで、ほとんどのエアシャワーは同一個体であっても東日本と西日本ではその風速が違います。これは周波数の違いによるもので、60Hz領域の方が風速が速いことになります。50・60Hz領域のどちらにも工場があるという場合には「風速の違いがある」ということを頭に入れておいた方がよいと思います。
風量(内部を清浄化する力に関連しています)
風量(立法メートル/分)=風速(メートル)×吹き出し面積(平方メートル)×60(秒)で計算します。一般的なエアシャワーでは1つの吹き出し口からほぼ1立方メートル/分の風量を吹き出します。内部の清浄度を良くするには風量が多いほうが速く清浄化ができます。簡単に言えば片側吹き出しと両側吹き出しの場合、倍ほど両吹きが清浄化が速い、ということです。
捕集効率
エアシャワーの場合、内蔵しているHEPAフィルターの仕様を言います。ほとんどの場合、0.3μm粒子にて99.97%以上です。稀に中性能や高性能フィルターを内蔵している場合もありますが、その場合はそれぞれのフィルター性能を捕集効率としています。
タイマー
エアシャワーが動作する時間(秒)を設定します。残り時間が分かるカウントダウン式もあります。ところで設定時間は最低でも20秒程度が望ましいようです。それより短いと付着していた汚れがチャンバー内に拡散しまだ清浄化しきれないうちにクリーンルームの中に入室することとなり、何のためのエアシャワーか分かりません。
インターロック
扉が同時に開かないようにする仕組みで、オプション扱いになっていることもあります。クリーンルーム内に汚染された外部の空気が侵入しないようにするためです。最近は手洗機やアルコール噴霧器と連動させるケースも増えています。これは手洗いやアルコール噴霧をしない人の入室を禁止するためです。シリンダ錠、マグネット錠などがあります。また、閉じ込め防止のための解除ボタンがセットで付いています。
使用電源
ほとんどの場合、AC200V 3相 が必要です。たまに100Vタイプもあります。
エアシャワー内の空気の流れ
ほとんどのエアシャワーは内部で循環する仕組みです。しかし、動作を開始すると急激に空気を吸い込むので扉を引いてもなかなか開かないほどの陰圧となります。
下部の吸い込み口にはプレフィルターが取り付けられていることが多く、ここで粗ゴミを除去したとブロアファンで加圧されたエアはHEPAフィルターを通過し清浄化されたのち、陽圧室で均等に昇圧し吹き出し口(パンカルーバー)から吹き出します。
エアシャワーの効果について
内部を清浄化する
人の周りには目には見えない微小なゴミが漂っていて、人が動くと気流によって一緒についてきます。これを「汚れのオーラ」と呼ぶ人もいます。エアシャワーはジェットエアでこの汚れのオーラを引き剥がし、清浄化された状態でクリーンルーム入室ができるようにします。
付着した汚れを落とす
ジェットエアを当てて付着した異物を落とす働きです。つまり、ジェットエアが直接当たらなければ効果はありません。作業員は積極的に体を回転させたり、腕を上げたり、叩いたり、なるべく全身にジェットエアを当てるようにします。2列タイプや片側吹きタイプでは注意しないとまったく当たらない死角も発生するので注意が必要です。対象となる異物の種類や大きさにより効果が異なります。あまり激しい動きをするとポンピング発塵を伴いいつまでもゴミが出てくることになりますので適度な動作を心掛けてください。
- 毛髪 クリーンウエアの表面に付着した(のっかった)状態の毛髪は風さえ当たれば、ほぼ100%除去可能です。
- 繊維くず シーズシーの研究では目に見える~100μm程度の大きさのもので60~80%程度の除去が可能です。20~30μmとなると50%以下になります。
- ヒトの皮膚片 繊維くずと比べると同じ大きさでも除去率はかなり悪く、数分の1以下しかとれません。苦手物質のひとつです。除去には粘着ローラーとの併用が効果的です。
- 30μm以下の異物 エアジェットだけではほとんど取れません。
人と台車、コンベア上のワークの違いについて
先に述べたようにエアジェットが当たらなければ、異物の除去はできませんので、動かないワークには死角が多く、まだら模様に除去されてしまいます。また、クリーンウエアを着用しているヒトは静電気がたまりにくい状態ですが、特に樹脂製品などのワークでは静電気による付着、また、エアジェット後の再付着に注意が必要です。
エアシャワーの問題点
エアシャワーには構造的な弱点があります。それを知らないと意外なゴミの発生源となってしまう可能性も。しかし、問題が分かれば対処もできます。また、弱点を補うさまざまな工夫をされた特別仕様のエアシャワーも存在しています。
1)気流の舞い上がり
エアシャワーは水平方向にエアジェットを吹き出すので対面の壁にあたったエアは周囲に拡散します。その時上に上がったゴミホコリはいつまでも気流渦に巻かれてなかなか減りません。上部から整流されたエアを下すことで防ぐことができます。
2)静電気による再付着
せっかく落とした異物も静電気による再付着が起こり、また、付着してしまうことがあります。強く帯電している物質は要注意です。イオナイザーを設置すると効果があります。シーズシーの実験ではイオナイザーを設置した場合、再付着しにくくなるという効果が確認できました。
3)落とした異物の回収
エアシャワーは吹き出し速度に対し吸い込み速度が遅く、しかも吸い込み面が側面についているので、落とした異物は内部に溜まり、最終的にはクリーンルーム内に入ってしまうという問題があります。何も対策をしないとエアシャワーはゴミだらけになってしまいます。対策としては底面吸い込み型(グレーチング・パンチングで異物を内側に落としてしまう)がもっとも効果的ですが、後からの改造は難しいので、粘着マットを内部と出口側にしいて回収します。よく玄関マットの要領でエアシャワー入口に粘着マットを置くことがありますが、 内部または出口側に置く方がよいと思います。
4)高額な輸送費・簡単でない設置作業
エアシャワーは1人用のベーシックなタイプでも約200kgの重量があり、輸送にはトラックが必要となります。遠距離となるとその費用もばかになりません。また、設置工事に関しても横引き可能な状態であればさほど問題はありませんが、エレベーターのない2階以上への設置や入口でエアシャワーが通過できない場合、段差が多い場合などは設置が困難になり費用も多くかかります。
機能を付加したエアシャワー
上記のような問題点を解決するため、付加機能を持ったエアシャワーもあります。
天井ダウンフロー付き
気流の舞いあがり対策用、または内部の清浄度を維持するために天井にダウンフローユニットを持ったエアシャワーがあります。シーズシーではコストを抑えるためにスリット(パンチング)気流式エアシャワーを開発し効果を上げています。
靴洗浄機能付き
靴底のゴミの除去に薬液を使用した湿式、ブラシのみの乾式の2種類の靴洗浄機能付きエアシャワーがあります。湿式の場合は排水処理のため一定の底上げが必要です。
イオナイザー付き
静電気を除去します。
ノズルの改良
エアジェットの機能を高めるため、パルスエアジェットや振動を持ったエアジェットを吹き出すように工夫された吹き出しノズルを持つエアシャワーがあります。また、広範囲に風を当てるスリット型吹き出し、スイング吹き出し式はトルネード式と呼ばれることもあります。
ちょっとした工夫でより使いやすく (各種オプション)
音声合成・動作の注意書き
「衣服を叩きながら回転してください」などナレーションを入れる機能です。同様の張り紙でもよいと思います。過去に見たもので面白かったのは南米からの研修生のために「中でサンバを踊りなさい」と書いてあったことがありました。
ガードレール
台車の衝突防止にガードレールを追加することも可能です。連結タイプのウォーキングタイプエアシャワーでは、体を回転させるようにわざと交互に手すりを入れたりすることもあります。
S字歩行
連結タイプのウォーキングタイプエアシャワーでは、体を回転させるようにわざと交互に手するを入れたりすることもあります。
存在(在室)検知センサ
エアシャワーを退室時にちょうどそこへクリーンルームから退出するするためにエアシャワーに入る人がいたら・・・動作はその時点で完結するので内部に閉じ込められてしまいます。そのようなことのないように存在検知センサを取りつけ、「すれ違いトラブルを防止」します。扉の挟まれ防止に同様のセンサを取り付ける場合もあります。
エアガン付き
落ちにくいゴミを落とすためにエアガンを内蔵したものもあります。
扉の種類
エアシャワーのバリエーションとして各種扉が選択できますが、コストはどの扉を選ぶかで大きく変わります。一般に台車などを使用する場合、外開きのエアシャワーでは扉の操作が難しく自動扉を採用するケースが多いようです。また、衛生面からドアノブによる交差汚染を防ぐために自動ドアを採用するケースもあります。自動ドアはそれ自体が高額でプログラム費用も加わるため大幅なコストアップになります。
手動扉
エアシャワーには底板がついているものが多く、そのときには4方枠扉を選択します。扉のガタつきが少なく、隙間も空きにくくなります。台車の通行のためなどで既設の床をそのまま使用する場合には3方枠扉になります。この場合は下部に若干の隙間ができますので、ゴム板などを取りつけて隙間を小さくするようにします。ところがこのゴム板がひっかかったり、摩耗して発塵の原因になったりすることがあるので注意が必要です。
ところで、エアシャワーの扉は全て外開きです。内開きのモノは作れないことはないと思いますが、スペースの関係で難しいでしょう。
引き戸式自動扉
エアシャワーの場合は上部レールによる吊り扉式がほとんどです。片側引きと両引き分けタイプがあります。仕舞のスペースとコストで選択します。
扉を引くと必ず、反対側に扉が飛び出してしまいますし、その後ろのスペースは用途が限定されてしまいますので、レイアウト構想時には注意が必要です。
高速シャッター式
エアシャワーの場合は上部レールによる吊り扉式がほとんどです。片側引きと両引き分けタイプがあります。仕舞のスペースとコストで選択します。
そのほか
手動扉では観音扉や親子扉式があります。自動扉では折戸式(他の扉と比べるとかなり高価)を見かけることもあります。その他、危険物を扱う工場では耐火式、防火仕様(防火区画用・特定防火区画用)、防火に関連してはパニックオープン仕様などがあります。
扉なし=ユニットのみ
既設の扉を応用してエアシャワーユニットのみを設置します。2台以上を連結して使用することもできますし、一般室などにおいてゴミを吹き飛ばすだけ(回収しない)のであれば、そのままでも使用可能です。
エアシャワー関連グッズ
CS-JJ
エアシャワーにも設置可能な除電ユニットです。静電気による再付着を防止する働きがあります。
動作フローについて
エアシャワーは主に扉のセンサーなどをトリガーとして自動運転を行うようにプログラムされています。これは客先要望によって変更が可能ですので、工場や製品特有の事情に合わせて設定できる場合があります。以下よく変更をいただくプログラムです。
インターロックのアップ時間
エアシャワーが吹き終わった(ファンモーターのスイッチがOFFになる)後もわずかに吹き続けます。これはエアシャワーのファンにブレーキ機能がないためですが、その間もホコリが舞っている可能性があります。では、いつ扉を開ければ大丈夫かと言えば、明確なデータはありません。よって、吹き終わり後にタイムラグを設けることがあります。
退室時にエアジェットを吹くか吹かないか
退室時にはエアジェットは必要ありませんがクリーンナップのために退室後に吹く設定になっている場合があります。
パスボックスの用途で使用する
ワークの搬入時など、通過でなく一度ワークをエアシャワー内部に入れて、その後内部からエアジェットをかけて引き込むというパスボックス用途で使用する場合があります。外用の台車やフォークリフトとクリーンルーム用を分けている場合など入室ができないためです。オプションで内部にモノがあるときに点灯するパトライトを付けたり、インターフォンを付ける場合もあります。
押しボタン・リモコンなどによる操作
自動ドア式でセンサーによる誤動作を防ぐために押しボタンを採用する場合があります。また、フォークリフトなどを使用する場合には降りてボタンを押しに行くわけにはいかないのでリモコンスイッチまたはヒモスイッチなどを使用します。
特殊仕様エアシャワー
エアシャワーは標準ばかりでなく様々な特殊仕様で制作することが可能です。製品や工場の事情によりご要望がある場合にはお気軽にシーズシーにご相談ください。以下特殊仕様の例を挙げてみます。
エアカーテン併用
防虫対策用 飛行虫はエアシャワーを通り抜けることがあります。よって前面に対向層流式のエアカーテンを付けて防虫対策とします。また、歩行虫はエアシャワーの引き戸式扉の隙間などを容易に通過したり、開閉時に入ったりするので別途対策が必要です。
消毒液噴霧タイプ
他社情報ですが、最近話題の感染症対策に薬剤を噴霧するタイプのエアシャワーが登場しているようです。※シーズシーでは対応しておりません。
温風エアシャワー
食品工場など低温クリーンルームの入室用として、ヒーターを内蔵したエアシャワーがあります。
階段式エアシャワー
通常は上昇式です。普通のエアシャワーでは風があたりにくい足元にもしっかりエアジェットが当たり、上に行くほど清浄度が高くなるのでハイクリーンクリーンルームなどで採用されることが多いようです。
変形出入り口エアシャワー
入室-退室の関係で、直角に出るL字型、退出口が二つあるT字型、連結タイプの一種でクランクに曲がったエアシャワーなどがあります。
コンベア付きエアシャワー
ワークの搬入用にコンベアを内部に設置したタイプがあります。扉の仕舞が問題で上下スライド式扉やビニールのすだれ、エアカーテンなどが使われます。
そのほかのエアシャワー
退室用エアシャワー
アスベスト、ダイオキシン、その他薬塵を扱う作業場から退室する際に専用エアシャワーを通過します。通常とは逆に入室時には吹かず退出時にエアジェットを吹き出します。
ホテルやマンション、ラーメン屋さんにも!花粉対策エアシャワー
花粉症の対策として様々な場所のエントランスにエアシャワーを設置することが一時流行りましたが、はっきり言って大した効果はないと思います。理由としてはクリーンウエアでない通常の服は引っ掛かるところが多く、花粉ををエアジェットだけで除去するのは困難だからです。また、往々にしてタイマーが短く設定してあって、却って舞いあがったところで退出すると前よりも多く花粉を吸引することになりかねません。